体の成長や筋肉強化に大切な成長ホルモンは、日常の様々な悪習慣で分泌量が低下しがちです。
今回は成長ホルモンの基礎知識と睡眠の関係、良質な睡眠をとる方法6つ、筋トレや有酸素運動の必要性、分泌が下がる原因4つを紹介します。
目次
成長ホルモンとは
成長ホルモンは体の骨格を形成し、骨や筋肉を大きくする働きを持つと考えられています。
しかし実は成長ホルモンはそれだけでなく、体のいろいろな部分に影響を与えているということが研究のデータで判明しています。
恒常性
人には、生命の要である「恒常性(ホメオスタシス)」と呼ばれる機能が備わっています。
恒常性とは、人が人であるために常に最善の状態を維持しようとする機能のことです。
体温が上がれば下げようとする、病気やケガになれば治そうとする、痩せたら太ろうとする「リバウンド」も恒常性の働きです。
ホルモン
そしてその恒常性を維持するために重要な役割を担っているのが「ホルモン」です。
ホルモンは脳からの指令により内分泌腺(ないぶんぴつせん)から血液中に分泌される物質で、人の体内に約100種類以上も存在しています。
例えば、食事をして血糖値が上がると、それを下げるために「インスリン」と呼ばれるホルモンが分泌され正常値に戻ります。
このように体の恒常性を維持するためにホルモンは重要な役割を担っているのです。
成長ホルモン
人の体に100種類以上あるホルモンの中でも、体の成長に大きく関わっているのが「成長ホルモン」です。
骨を成長させて大きくする働き、筋肉を成長させる働き、そして代謝を促す働きなどがあります。
成長ホルモンを分泌させることで体の成長が促され、筋肉の発達やケガの治癒に役立ちます。
体を大きくしたい人は、骨格を成長させるために。
薄毛に悩んでいる人は、髪の毛を成長させるために。
そして筋トレをしているのであれば、この成長ホルモンをたくさん分泌させることも大切なトレーニングの一環だと言えるでしょう。
成長ホルモンが最も分泌されるのは睡眠時間
前置きが長くなってしまいましたが、ここで本題です。
成長ホルモンを最高に分泌させるたった一つの方法とは、「睡眠」です。
もちろん成長ホルモンは他の要因でも分泌しますし、睡眠時以外でも分泌することがわかっています。
しかし成長ホルモンが一番分泌するのはどのタイミングなのか、と問われれば間違いなく「睡眠時である」と答えることができるでしょう。
近年の研究データでもしっかりと結果が出ています。
もっと詳しく言うと「睡眠2~3時間後が成長ホルモンの分泌が最大になる」という研究結果が出ています。
今までは夜の22時~2時がゴールデンタイムと言われていましたが、実はそれは完璧な答えではなかったようです。
最近の研究では、時間に関係なく、睡眠2~3時間後がゴールデンタイムであるということなのです。
つまり夜更かしをしてしまっても、なんなら徹夜をしてしまっても、そのあとしっかりと質の高い睡眠をとっていれば、ちゃんと成長ホルモンは分泌するということなのです。
成長ホルモンの分泌を高める質の良い睡眠方法6つ【運動も効果的】
ではどのようにすれば、睡眠の質を高めることができるのでしょうか。
いくつかポイントがありますので、しっかりと押さえておきましょう。
睡眠時間
一番基本的なことになりますが、まずは十分な睡眠時間を取ってください。
最低でも6時間ぐらいは継続して睡眠をとりましょう。
もし徹夜をしてしまって、朝そのまま学校や仕事に行くというのは、成長ホルモンの分泌にとって一番ダメな行動パターンだということを知っておきましょう。
電車の中で寝たり、お昼寝をしているから大丈夫と思っていても、成長ホルモンの分泌に関して言えば、あまり良くありません。
細切れ時間で寝るよりも、夜しっかりと長い時間寝ることのほうが大切なのです。
睡眠のリズム
毎日の睡眠リズムも重要です。
毎日バラバラの時間に寝るより、毎日同じ時間に寝るほうが成長ホルモンが多く分泌されるということがわかっています。
簡単に言うと、毎日同じ時間に寝ることで、成長ホルモンを分泌する「時間」を体が覚えてくれるのです。
体が時間を覚えてくれると、もしその時間に寝なかったとしても、時間になったらある程度の成長ホルモンが分泌されるという面白いデータもあります。
成長ホルモンの分泌を最大にしたいのであれば、「毎日できるだけ同じ時間に寝る」ように心がけましょう。
寝る前の準備
質の高い睡眠をとるためには、睡眠前の準備がとても大切です。
睡眠前にしっかりと準備をすることで、体が睡眠の準備をし始めます。
そうすることで寝つきがよくなり、質の高い睡眠をとることができるのです。
ポイントは5つあります。
① 寝る1時間ぐらい前から部屋を少し暗くしておくこと。
② 体を温かくしておくこと。
③ 寝る直前にスマホやPCの明るい画面を見ないようにすること。
④ リラックスするためのアロマや、落ち着く音楽を聴くのも効果的。
⑤ 食事もなるべく早い時間に済ませ、寝る直前には何も食べないようすること。
寝る直前に食べてしまうと体が活発に活動してしまい、質の高い睡眠がとれなくなってしまいます。
朝日を浴びる
朝起きた時に、朝日を浴びることで体内時計がリセットされます。
そうすることで、夜またしっかりと寝ることができるようになります。
毎日のリズムが大切なので、休みの日もできるだけ寝坊せずに朝日を浴びる習慣を作りましょう。
これは睡眠のリズムだけでなく、自律神経を整えることにもつながります。
毎日同じ時間に朝日を浴びて体内時計をリセットする、たったこれだけで自律神経がある程度整います。
コントロールが難しいとされる自律神経を整えることで、夜寝るときもリラックスして質の高い睡眠がとれるようになるでしょう。
ストレスの発散
ストレスがたまると、睡眠の質は低下します。
適度なストレスは健康にも良いのですが、強いストレスを受け続けると健康に被害を及ぼします。
特に自律神経が深く関わっている睡眠は、ストレスの影響を受けやすいとされています。
ストレスと言っても、人間関係や学校、仕事関係のストレス、家庭環境でのストレスなど様々です。
できるだけストレスをためないよう、ストレスの根本を取り去ってしまうことも大切です。
悩み事があれば、信頼できる人に相談してみましょう。
そして自分なりにストレスの発散方法を見つけて、できるだけストレスをためない生活を意識しましょう。
注意点としては、お酒をたくさん飲んだり、タバコを吸ったり、大騒ぎをしたり、ということはストレスを発散しているように見えて、反対にストレスを増加させてしまっていることがある、ということです。
ゆっくり何も考えない時間を作る、リラックスできる音楽を聴く、軽い運動をする、瞑想をするなど、時間をかけてゆっくりと心を落ち着かせるようにすることが大切です。
運動の習慣をつける
軽い運動の習慣は、睡眠の質を高めるのに有効であるということがわかっています。
反対に運動不足であることが、睡眠の質の低下を招くと言ったほうが正しいかもしれません。
できれば毎日、少なくとも週1回ぐらいは軽い運動を取り入れてみましょう。
運動の習慣は、先ほども言った自律神経に関係していたり、ストレスの発散になったりと、様々な良い影響を与えてくれるでしょう。
睡眠以外の成長ホルモンの分泌を促す方法 筋トレ&有酸素運動を取り入れよう
これまで成長ホルモンと睡眠に関して述べてきましたが、成長ホルモンの分泌は睡眠時だけではありません。
最高に分泌させる方法は「質の高い睡眠をとること」だけですが、それ以外でも意識しておきたいことはたくさんあります。
有酸素運動
有酸素運動は睡眠の質を高めるだけでなく、成長ホルモンの分泌を促すということもわかっています。
週5回、1日30分の軽い運動を継続したときに成長ホルモンの分泌が多く見られた、という研究データも出ています。
有酸素運動とは、ランニングや水泳などの軽い運動のことです。
しゃべりながら継続できるぐらいの強度で、最低でも20~30分ほど継続することが大切です。
普段運動に慣れていない人であれば、ウォーキングだけでも十分な効果を得ることができるでしょう。
筋トレ
有酸素運動ではなく、無酸素運動も成長ホルモンの分泌を促します。
無酸素運動とは、負荷の高い運動で、筋力トレーニングや加圧トレーニングなどが有名です。
有酸素運動とは違い、楽な呼吸をしながらする運動ではないので人によっては難しいかもしれません。
今では加圧トレーニングやスロートレーニングなど、年配の方や女性でも気軽に行える無酸素運動が増えています。
男性なら自宅やジムでガッツリ筋トレをしましょう。
無酸素運動は、乳酸を多く発生させます。
これまで乳酸はただの疲労物質と言われてきましたが、近年の研究では乳酸が成長ホルモンの分泌を促す物質であるという報告がされています。
無酸素運動で乳酸を発生させることが、実は成長ホルモンの分泌にとって良い結果になるということです。
食事
成長ホルモンは、タンパク質で構成されています。
もっと詳しく言えば、タンパク質は20種類のアミノ酸で構成されているので、成長ホルモンはアミノ酸で構成されているということになります。
けれどそこまで考える必要はありません。
大切なことは、成長ホルモンの分泌にはタンパク質の摂取が必要不可欠だといいうことです。
タンパク質が不足すると、成長ホルモンだけでなく、体の様々なところで悪影響を及ぼしてしまいます。
タンパク質を多く含む食材としては、カツオやマグロなどの魚類、豚肉や鶏肉などの肉類、牛乳やチーズなどの乳製品、味噌や納豆などの大豆製品です。
これらのタンパク質が豊富な食材を意識して食べることでタンパク質不足を解消し、成長ホルモンの分泌を促すことができるでしょう。
成長ホルモンの分泌が下がる原因4つ
これまで成長ホルモンの分泌を促すにはどうすれば良いかを詳しく解説してきました。
反対にどのようなことが原因で成長ホルモンの分泌が阻害されるのでしょうか。
睡眠不足
一番重要なのが、やはり睡眠です。
睡眠不足は成長ホルモンの分泌を大きく阻害してしまいます。
1日の中で成長ホルモンが一番分泌する時間帯が、睡眠中に訪れます。
この時間を逃すと、成長ホルモンの分泌が大きく減少してしまいます。
成長ホルモンを効率良く分泌させたいのであれば、睡眠はしっかりと摂るようにしましょう。
加齢
加齢によっても成長ホルモンの分泌量は変わります。
思春期には人生の中で一番多く成長ホルモンが分泌されます。
つまり、この時期にしっかりと寝て、健康的な食事をとり、しっかりと運動するという習慣があれば、体が大きく成長しやすいのです。
思春期の後期を過ぎたあたりから徐々に成長ホルモンの分泌は低下していきます。
60代でも成長ホルモンは分泌しますが、人生のピークにくらべると10分の1ほどになってしまいます。
乱れた生活習慣
生活習慣の乱れも、成長ホルモンの分泌に大きく関わっています。
睡眠や食事はもちろん、生活のリズム、お酒、たばこ、運動、すべてがホルモンの分泌に影響しています。
成長ホルモンをしっかりと分泌させたいのであれば、毎日規則正しい生活を送る習慣を身につけておきましょう。
栄養バランスの偏った食事
成長ホルモンの分泌にはタンパク質の摂取が欠かせない、と言いました。
しかしタンパク質だけをとっていても意味がありません。
栄養はしっかりとバランスよくとる必要があるのです。
特にビタミンやミネラルは体の機能や代謝に大きく影響する栄養素です。
もちろんホルモンの生成や分泌にも影響しますので、欠かすことはできません。
基本的には、炭水化物、脂質、タンパク質の三大栄養素に、微量栄養素と呼ばれるビタミンとミネラルを含む「五大栄養素」をバランス良く摂取することが大切です。
そして、先ほども言ったように「タンパク質」は成長ホルモンに関係する最重要の栄養素となっています。
不足しないようしっかりと意識して食事をとりましょう。
まとめ
・質の良い睡眠が成長ホルモンの分泌を促す。
・不規則な生活をすることで成長ホルモンの低下をまねく。
体には恒常性(ホメオスタシス)を維持するために、様々なホルモンが分泌され活動しています。
インスリンやアドレナリン、テストステロン(男性ホルモン)、エストロゲン(女性ホルモン)など、どれも人の生命活動に欠かせない重要なホルモンです。
そしてその中でも特に成長ホルモンは体の各器官、言ってしまえばすべての器官に影響する最重要のホルモンであると言えるでしょう。
そのため睡眠だけではなく、いろいろな要素が複合的に作用し、分泌量が変化していきます。
成長ホルモンは分泌されているかどうか目に見えるものではないですし、対策をしたからと言って素直に分泌されるようなものでもありません。
しかし今では研究でその方法がある程度確立されているので、それを信じて対策をとることは、とても大切なことなのではないでしょうか。
生きるために、健康のために、成長のために、成長ホルモンの分泌対策をしっかりと行ってみてください。