働くことは大切ですが過度な残業時間は過労死を招きやすく実際過労死が認められた電通の事例が最近起きたばかりです。
今回は過労死の原因となる残業時間数、前兆の症状4つ、電通の過労死(過労自殺)の事例、対策4つを紹介します。
過労死とは?
日本社会では、「過労死」という言葉がよく聞かれますよね。
海外でも、日本の過労死問題が取り上げられることもあるくらいですので、それだけ大きな問題になっていることがわかります。
では、そもそも過労死とは何を意味するのでしょうか。
この章では、その点に具体的にご説明しましょう。
いわゆる突然死
過労死については、基本的には突然死です。
突然バタっと倒れてしまい、そのまま亡くなってしまうということですね。
ただ、突然死のケースが全て過労死の扱いになるかというと、それは違います。
仕事の影響により、身体や精神が追い込まれ、それによって突然死したケースが、過労死ということになるのです。
死因は複数ある
過労死の死因についてですが、1つに限られるわけではありません。
心臓麻痺というケースもありますし、脳溢血というケースもあります。
そのため、過労死認定にあたっては、亡くなった原因を解明することが重要なのです。
過労死の原因と認定されやすい残業時間数とは
会社で働いている人であれば、一度は残業をしたことがあるはずです。
定時で帰れるケースも多々あると思いますし、本来であればそれが望ましいでしょう。
しかし、日本社会で組織に入って働くのであれば、毎日残業ゼロというわけにはいきません。
少なからず時間外労働をすることになるのです。
もちろん、残業そのものが法律で規制されているわけではありませんので、多くの企業では当たり前のように残業が行われています。
ただ、青天井の残業が認められているわけではありません。
労働基準法により、時間外労働の上限が定められているのです。
そのため、「無制限で残業をさせてやる!」という経営者がいた場合、非常に問題ということになります。
さて、多くのケースでは、残業時間が長すぎることによって過労死が起きます。
そこで多くの人が気になるのは、「何時間くらいがボーダーラインなの?」ということですね。
結論から言うと、「80時間」です。
月80時間の時間外労働が続いている状況の中で、健康問題が引き起こされた場合、労働時間との関連性が認められやすいということなのです。
もちろん、「80時間残業したら過労死する」というわけではありませんので、あくまでもボーダーラインの目安としておぼえておきましょう。
過労死の前兆といえる症状4つ
先ほどご説明したように、過労死というのは突発的に起きるものです。
「このまま労働を続けていれば、3日後に過労死する」ということが分かっているのなら、回避のしようもあるでしょう。
しかし、突然倒れてそのまま亡くなるようでは、直前の回避が難しいように思えますよね。
ただ、前兆らしきものが全く見られないかというと、必ずしもそうではありません。
そこで、この章では過労死の前兆についてご説明しましょう。
胸部に圧迫感がある
厳しい労働環境が続く中で、胸部への圧迫感をおぼえることがあった場合、要注意です。
そのことによってすぐに命を落とすとは限りませんが、「心疾患」は過労死の前兆としては起こりうる症状です。
少なくとも、胸部を圧迫され、やや息苦しいような症状を度々感じる場合、何らかの健康上の問題が起きている可能性が高いです。
たびたび動悸がする
過度に緊張すると、動悸を感じたりする人もいるでしょう。
ただ、特に緊張していないにもかかわらず、心臓の鼓動が大きくなるような感触をおぼえている場合、要注意です。
なぜなら、これもまた、「心疾患」の症状として考えられるからです。
放っておくと心筋梗塞によって命を落とす可能性もありますので、そうなる前に対処しなくてはなりません。
めまいがして歩くことすら難しい時がある
軽いめまいくらいなら多くの人が経験していると思いますが、めまいによって歩行すら困難な状態になった場合、例えそれが一時の間であったとしても、かなり危険と言えます。
なぜなら、このようことは「脳血管疾患」の症状として起こりうることだからです。
脳血管疾患とは、脳の血管が異常を引き起こすことです。
これで亡くなるケースも多々ありますので、要注意です。
手足が痺れることがある
正座を長い時間していたりすると、足が痺れることがありますよね。
これはある意味自然な現象です。
しかし、特に正座をしているわけでもないのに、片方の手足が突発的に痺れることがある場合、健康上の問題を疑った方がいいでしょう。
このような症状についても、「脳血管疾患」のケースとして考えられるものです。
脳梗塞で倒れてしまった場合、仮に一命をとりとめたとしても、重い障害が残る可能性があります。取
り返しのつかない事態になる前に、医療機関で受診する必要があるでしょう。
電通で起きた過労死(過労自殺)の事例を紹介
過労死と同じタイミングで話題に上がることの多いワードが「過労自殺」です。
過労死と過労自殺も、原因が「過労」にあるという点では同じです。
違う点は、自ら命を絶つかどうかです。
過労自殺は、あまりに過酷な労働により心身ともに追い込まれ、自ら命を絶つことを言います。
絶対にあってはならないことですが、過労自殺のケースは多くあるのです。
そこで今回取り上げたいのが、電通の社員が過労自殺した事例です。
とても悲惨な事例であり、国会でも取り上げられたほど大きな問題になりましたので、この章では具体的に実態をご説明しましょう。
①過酷な長時間労働を強いられていた
当時電通の社員として働いていた高橋さんは、非常に長い時間の労働を強いられていました。
具体的には、月140時間の残業を強いられていたそうです。
80時間が過労死のボーダーラインと言われていますので、それを大幅に上回っていることが分かります。
高橋さんは肉体労働ではなくデスクワークでしたが、140時間も残業をしていたことを考えると、相当に疲労が蓄積していたことが推測されます。
②上司から執拗に責められていた
過酷な労働環境であっても、上司が優しい人であれば、それだけで心の支えになるはずです。
しかし、高橋さんのケースでは、理想と大きくかけ離れていた上司でした。
高橋さんが一生懸命に努力して仕事を仕上げたにもかかわらず、上司はその仕事の出来に対して強く批判したそうです。
その罵声ともとれる批判は、高橋さんの心を徐々に追い詰めていきました。
③母親との電話を最後に過労自殺
心身ともに疲れ切った高橋さんは、母親からの励ましの電話を受けた数時間後、自殺してしまいました。
当時の高橋さんが置かれていた状況を踏まえると、過労自殺であることは言うまでもありません。
実際に、労働基準監督署が過労自殺と認定しています。
こういった経緯もあり、高橋さんの上司は書類送検され、企業そのものも訴えられました。
とても悲惨な出来事ですね。
④責任を問われた電通に対して50万円の罰金
裁判の結果、電通に下された判決は50万円の罰金です。
労働基準法違反での罰金となりますが、あまりに額が小さすぎるという声が多かったですね。
確かに、50万円という罰金で企業の体質が抜本的に変わるとは思えません。
したがって、罰金制度に関しては今後見直す余地があるでしょう。
また、当時の高橋さんの上司については、最終的に不起訴処分ということになりました。
この処分にも納得がいかないという声が多く、現に高橋さんの母親は東京検察審査会に申し立てを行っています。
過労死の対策4つ 【家庭でできるものも】
どうすれば過労死を減らせるのかという視点は、非常に重要です。
過労死の可能性を少しでも低くできる取り組みがあるのなら、ぜひ実践したいところですよね。
そこで、いくつかアイデアをご紹介しましょう。
①②が企業としてできる取り組み、③が国としてできる取り組み、④が各家庭でできる取り組みとなっていますので、それを踏まえてご覧ください。
①残業時間の削減に取り組む
企業としても、自分のところで過労死が何人も出るような状況を望むわけはありません。
そのため、過労死対策に向けて取り組む企業が大半でしょう。
もちろん、業務の達成に残業はつきものですが、その時間というのは企業側が定める規定で制限をかけることができます。
1日に3時間も4時間も残業をするような社員が出ないように、職場内の役割分担を促すことや、人員の補填をすることによって負担の分散を図ることもできます。
このように、残業を減らす取り組みをしようと思えばいくらでもアイデアはありますので、後は企業側が実行できるかどうかということでしょう。
②残業時間によっては医師の面談を設ける
社会には、産業医と言われる人がいます。
産業医は、働く人の健康管理面においてアドバイスをする役割を担います。
このような人の存在は重要ですので、多くの事業場において産業医が選任されているのです。
この産業医との面談を企業側が促すことによって、従業員の健康管理をサポートすることにつながります。
実は、国がすでに面接指導制度を設けており、制度に該当する場合には医師と面談させるよう企業側に働きかけています。
ただ、その制度の項目に該当しない労働者が健康万全で働けているとは限りません。
そのため、企業側として、産業医と労働者が話し合いをする機会をより多く設けることが重要ではないでしょうか。
もちろん、産業医のアドバイスを受けて終わりということでは、あまり意味がありません。
大事なのは、もし産業医が「働きすぎで体調面に支障が出ている」という診断を下した場合、その労働者の負担を軽くできるよう、企業側でしっかりとサポートすることです。
休ませるということも大事ですし、仕事量についても見直しを図ってあげるべきでしょう。
③企業への罰則規定を定める
月に100時間以上も残業する人が多くいることの原因は、もちろん企業側にあります。
しかし、いわゆるブラック企業が日本に多く存在する理由は、罰則規定がゆるいからという指摘もあります。
高橋まつりさんのケースでも、労働基準法違反とは言え50万円の罰金にしかならなかったため、そういった指摘が出るのも当然と言えます。
そこで、企業への罰則規定を強めたり、新たに追加するというのが対策になるでしょう。
違法な長時間労働をさせた場合、とても大きな代償を払うことになるのであれば、ブラック企業であっても過労死防止に取り組まざるを得ないということですね。
本来であれば、全ての企業が良心的になり、罰則関係なく労働者のの健康を重んじるようになれば、こんな素晴らしいことはありません。
しかしながら、過労死の連鎖が止まらないのが今の日本の現状です。
そのため、罰則規定を強めざるを得ないということではないでしょうか。
④家族で過労死の問題を共有する
過労死は突然死と言われることもありますが、多くのケースでは前兆があります。
その前兆に気づきやすいのは、もちろん過酷な労働状況にあるその人自身です。
しかし、仕事第一主義で行動する人の場合、前兆があっても無視して仕事を続けようとするかもしれません。
その結果、過労死という悲惨な結末になってしまうのでしょう。
したがって、その前兆に気づき、適切に助言を与えてくれる人の存在が必要であり、それが家族ではないでしょうか。
大事なことは、家族間で過労死の問題を認識し、互いに健康状態をチェックしていくことですね。
まとめ
・過労死の原因と認定されやすい残業時間数は80時間。
・家族間で過労死の問題を認識し、互いに健康状態をチェックをすることで過労死が防げることもある。
今回は、過労死の意味や、過労自殺の事例、過労死対策などについて具体的にご説明してきました。
社会で生きていくためには、働かなくてはなりません。
そのため、働く環境というのは常に良好であることが望ましいです。
しかしながら、全ての企業が良好な職場環境を構築できているかというと、残念ながらそうではありません。
劣悪な労働環境の中で、苦しんでいる社員が大勢いるのです。
本来であれば、そのような環境から速やかに抜け出すことが望ましいですが、転職への不安もあり、なかなか一歩踏み出せない人も多くいます。
したがって、こういった問題の解決には、国も乗り出す必要があります。
現在話題になっている働き方改革は、劣悪な労働環境の改善にかかるポイントも含まれていますので、その点は高く評価できるのではないでしょうか。