職場でのパワハラは上司だけとは限らず様々な例があり証拠を集めて訴えを起こし勝訴することで相手に仕返しも可能です。
今回は職場でのパワハラの定義、具体例、解決例、仕返しのための証拠集め、訴える手順、書籍4選を紹介します。
目次
職場でのパワハラの定義とは?
現代ではパワハラが一切ない会社というのは、逆に珍しいかもしれません。
多くの会社では、パワハラの1つや2つはあります。
ただ、多くのケースでは、そういったパワハラが明るみにならないということですね。
パワハラをされている側も、訴えるにあたっては色んな意味で勇気が必要になりますので、我慢してやり過ごしているケースも多いのです。
ただ、執拗なパワハラをずっと受け続けるというのは、マイナスでしかありませんので、適切に対処する必要があります。
では、そもそもパワハラの定義とは何なのでしょうか。
本人としては嫌でも、パワハラとして認められない場合もありますので、まずは定義を知っておく必要がありますね。
ポイント①優位性
会社というの縦社会ですので、立場の違いというものがあります。
そのため、職場では優劣が存在するわけですね。
例えば、上司については、部下に対して優位性を持っていることになります。
立場が上ですので当然ですね。
「じゃあ嫌なことされたらパワハラになるのは上司だけってこと?」と思う人もいるでしょう。
実は、必ずしもそうではありません。
上司から嫌なことをされた場合もパワハラにあたるケースがありますが、優位性を発揮できるのは上司だけではありません。
例えば、Aさんという人が職場内でしっかりと人間関係を作っていたとします。
その一方、Aさんの同僚のBさんは、職場内で孤立しているとします。
このような状況下では、AさんがBさんに対して人間関係上の優位性があるということになるのです。
したがって、パワハラにおけるポイントの一つである「優位性」については、職場上の立場に限らないということですね。
ポイント②業務上の適正範囲
先ほど、優位性についてご説明しました。
ただ、優位性がある人が何か命令したとしても、それ自体がパワハラかというと、必ずしもそうではありません。
そもそも、立場が上の人であれば、部下に対して指示をするのが業務の範囲内ですので、「命令されたからこれはパワハラだ!」というのは誤りです。
しかし、優位性を持つ人が、適正と言える業務の範囲を超えて、他人に精神的なダメージを与えたり、職場環境に悪影響が出ることをした場合は、パワハラに該当するのです。
こう聞くと、「パワハラになる事例ってあまりなんじゃないの?」「僕が受けている苦痛がパワハラに該当しないんじゃ…」と思う人がいるかもしれませんね。
確かに、何でもかんでもパワハラに該当するわけではありませんが、優位性がある人から業務に関係のないことで精神的苦痛を受ければ、基本的に一発でパワハラです。
そのため、被害者が何も言わないだけで、パワハラのケースというのは全国的に膨大にあるでしょう。
職場でのパワハラの具体例6つ
先ほど、パワハラの定義についてご説明しまたが、具体的なケースについて知りたいという人も多いでしょう。
確かに、ピンとくるような具体例を頭に入れておきたいですよね。
そこで、この章ではパワハラの具体例についていくつか取り上げていきます。
職場内で暴言を浴びせられるケース
仕事でミスをすれば、職場の上司から苦言を呈されるケースもあるでしょう。
ミスしたわけですから、「次から気をつけてくれよ!頼むよ!」など、多少注意されるのは仕方ありません。
ただ、注意ならまだしも、「お前こんなこともできないのか!カス!そこら辺のアホでもこんなことできるぞ!」というのは注意でもなんでもなく、ただの暴言です。
このような暴言は、業務の範囲内の注意ではありませんし、精神的苦痛を受けますので、はっきりパワハラということになります。
過度に威圧されるケース
暴言というほどの内容ではなかったとしても、注意の時に怒鳴る上司というのは存在します。
基本的に、明らかな怒鳴り声で叱責をするというのは、暴言でなかったとしてもパワハラに該当するのです。
また、怒る時に机をバンバンたたくような行為をする上司もいますが、この行為も極めて威圧的ですので、パワハラと言えます。
大きなミスをすればその分注意を受けるのは当然ですが、過度に威圧された場合は、「これってパワハラかも…」というように気づくことが大事です。
長時間にわたって批判されるケース
優位性があるのをいいことに、他人を長時間にわたって批判し続けるようなケースも、パワハラに該当します。
多くのケースでは、上司から部下に対しての非難ですね。
上司に「ちょっと来なさい」と言われれば、立場上話を聞くことになります。
その結果、数時間に渡って強い口調で非難され続けると、精神的苦痛を受けることは言うまでもありませんね。
膨大な仕事量を押し付けられるケース
立場上の優位性がある上司であれば、部下に対して仕事を任せることができます。
そのため、部下としても、ある程度のところまでは受け入れる必要があります。
「仕事したくないので嫌です」というのは、会社員である以上は言えませんね。
ただし、常識的に考えておかしいくらいの量の仕事を押し付けられ、「週明けまでにやってこいよ!」などと無理難題を突き付けられたのであれば、これはパワハラ事案です。
無理に休日出勤をしなければ捌ききれないほどの仕事量を押し付けられるのは、とても大きなストレスになりますし、業務上の適正範囲を超えていると言えます。
仕事を与えてもらえないケース
サラリーマンであれば、仕事をするのが使命です。
しかし、自分に見合っただけの仕事を与えてもらうことができず、いわゆる窓際族にならざるを得なくなっているのであれば、パワハラ事案と言えるでしょう。
仕事が欲しいと言っているのに見向きもされず、得るべき情報も与えられないのであれば、精神的苦痛を感じることは明白です。
「パワハラ」というと暴力的なイメージを抱く方もいるかもしれませんが、このようなパワハラもあるわけですね。
業務と関係ないことをやらされるケース
上司から業務上の指示をされるというのは普通ですが、業務と直接関係ないことを命じられ、半ば強制的にやらされるというのは、パワハラにあたります。
例えば、以下のようなことはパワハラにあたります。
「明日から俺より安い鞄で来いよ!」
「俺より高い弁当を食べるな!」
「タクシー使いたくないから明日は3時間かけて俺を迎えにこい!」
上記のような命令については、明らかにパワハラに該当するでしょう。
適正な業務の範囲外ですし、優位性を利用していることも明白ですね。
こういったパワハラがある会社というのは、非常に問題と言えるでしょう。
職場でのパワハラ解決例3つ
パワハラが長いこと続いているケースも多いですが、早い段階で解決となったケースもあります。
では、パワハラを受けた人は、どのような方法で解決を図っているものなのでしょうか。
この章ではいくつか解決したケースを取り上げていきます。
当事者間で話し合いをして和解
1つ目は、パワハラをしている側とされている側で和解をするケースです。
パワハラの件で話し合いをし、円満に解決するというのはとても穏やかですね。
ただ、「次からはパワハラを止める」ということであって、これまでパワハラをしてきた分の責任はとらないケースも多いようです。
ですので、被害者側としては納得がいかない部分もあるでしょう。
「これまでパワハラを受けたのは嫌だけど、今後控えてくれるならまぁいいか」ということで妥協するわけですね。
申告の上で会社内で解決
会社としては、従業員が気持ちよく働けるように環境を整備することが役目と言えます。
そのため、社員からパワハラの申告を受ければ、しっかりと調査をして解決に努めなくてはなりません。
実際に、会社がパワハラを調査し、事実確認をしてから加害者を処分したケースはたくさんあります。
もちろん、被害者側の訴えが通らなかったケースも多くありますので、申告さえすれば100%解決するかというと、そうではないということですね。
退職
パワハラを受けた側が、パワハラを理由に退職するケースというのは多いです。
加害者側に非を認めさせる形での解決ではありませんが、退職をすることでパワハラを受けることはなくなりますので、そういった意味では解決と言えます。
ただ、退職となると、これまでその会社で築いてきた地位を失うことになりますので、被害者にとってはマイナス面が大きいと言えるでしょう。
職場でのパワハラ上司&同僚に仕返しするには?【証拠集めが大切】
パワハラ問題の解決に対応する企業は多いですが、世の中の全ての企業が、本気になって被害者の訴えを受け止め、前向きに解決に動いてくれるかというと、必ずしもそうではありません。
むしろ、パワハラを訴える社員を煙たがるような企業もあるでしょう。
そのため、「会社は訴えを聞いてくれないし、どうすればいいの?」と思う人もいるかもしれませんね。
その場合、「裁判」で訴えるという手段も選択肢として考えておきましょう。
パワハラを受けている確固たる証拠があれば、勝訴は十分に見込めます。
ただ、単独で裁判を起こすとなると、原告側も色々とやるべきことがありますで、その点の労力は想定しておかなければなりません。
裁判を起こす場合の具体的な流れについては、次の章でご説明しましょう。
職場でのパワハラ上司&同僚を裁判で訴える手順5つ
基本的に、パワハラ裁判については「民事」が多いです。
民事裁判では、加害者が刑罰を受けることはありませんが、損害賠償するよう命じられるケースはあります。
そのため、パワハラを受けて精神的あるいは身体的苦痛を受け、「損害賠償だ!」ということであれば、民事裁判を起こして決着をつければいいということですね。
もちろん、結果として敗訴になったケースもありますが、勝訴したケースも多くあります。
この章では、原告側がすべきことに絞り、民事裁判の手順について簡単にご説明したいと思います。
①弁護士への依頼
裁判期間中にすべきことのサポートを受けるには、法律の専門家である弁護士に依頼するのが無難な選択です。
弁護士に依頼せず、単独で裁判を起こすケースもあり、これを「本人訴訟」と言います。
ただ、弁護士のサポートなしで勝訴まで持っていくのは、あまり現実的ではありません。
原告側が法律の専門家でない場合はなおさらですね。
そのため、まずは実績のある弁護士に依頼する必要があるでしょう。
ただ、例え実績があっても、パワハラ訴訟に関しての経験がほとんどない弁護士であれば、依頼は避けた方がいいでしょう。
パワハラ訴訟の実績が豊富な弁護士を選んだ方がいいですね。
また、一つ踏まえておきたいことは、「費用」です。
弁護士に依頼する以上、仮に敗訴になったとしても費用が発生しますので、その点を踏まえた上で依頼するかどうか検討しましょう。
②訴状の提出
最初のステップは、裁判所に対する訴状の提出です。
ここで言う訴状とは、どのような裁判を希望し、どのような請求を希望するのかなどを記載するものです。
この訴状を受理してもらわないことには、裁判は始まらないということですね。
「どう書いたらいいのか分からないんだけど」と思う人もいるかもしれませんが、この辺りのサポートも弁護士にやってもらうことができますよ。
③口頭弁論
訴状を提出し、被告側から答弁書が提出されたら、口頭弁論へ移ります。
いわゆる法廷ですね。
原告と被告がそれぞれ主張を述べるということになります。
ここで発言する内容は、判決を左右する要素の一つになりますので、とても重要です。
仮に嘘を言ってしまうとペナルティを受けることになりますので、嘘はやめましょう。
そもそも、中途半端な嘘をついて後でそれがバレてしまえば、敗訴はほぼ確実ですね。
ただ、何も考えずに口頭弁論を迎えても、緊張もあってうまく答弁できないかもしれませんね。
そのため、事前に弁護士とよく話し合っておいた方がいいでしょう。
④証拠調べ
口頭弁論において主張したことが真実だと認めてもらうためには、「証拠」が必要になります。
そのため、証拠調べにおいて証拠を提出する必要があるのです。
ただ、提出した証拠の全てが判決を左右するものになるかというと、そうとは限りません。
「5つの証拠を提出した場合、その中から3つの証拠を重要なものと捉える」というケースも考えられますので、その点を踏まえておきましょう。
⑤判決
最後に行われるのが、「判決」です。
原告への支払い命令が下されれば「勝訴」ということになりますし、請求棄却の判決が下されれば「敗訴」ということになります。
「じゃあ敗訴したらもう終わり?諦めるしかないの?」と思う人もいるでしょう。
実はそうではありません。「控訴」という手段があります。
「控訴」とは、さらに上の裁判所で引き続き争うことを意味します。
具体的には、高等裁判所というフィールドでもう一度裁判を行うということですね。
ただ、控訴したからと言って勝訴できるとは限りませんので、その辺りはよく考慮して判断する必要があるでしょう。
職場でのパワハラの判例が豊富な書籍4選
パワハラで裁判になったケースというのは、多くあります。
そのため、判例も多いわけですね。
そして、パワハラ裁判の判例が載った本というのも、多く販売されています。
これから裁判を起こすにあたって、そういった本についてはとてもいい参考資料になりますよね。
そこで、判例をまとめた本を4点ご紹介しましょう。ぜひご覧ください。
おすすめ商品①
1点目にご紹介する商品は、「おさえておきたい パワハラ裁判例85」です。
この商品に関しては裁判例と解説が豊富に載った本となっています。
もう少し具体的に言うと、パワハラ事案の概要や、判決要旨、コメントなどが載っています。
ですので、裁判についての知識があまりない人でも理解できるような分かりやすい本になっているのです。
なお、専門的なことだけでなく、著者の見解も交えて解説がなされていますので、ぜひ購入を検討されてはいかがでしょうか。
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おさえておきたい パワハラ裁判例85 単行本 – 2017/4/20
おすすめ商品②
2点目にご紹介する商品は、「判例で理解する職場・学校のセクハラ・パワハラ」です。
この商品に関しては、パワハラだけでなく、セクハラの判例も載った本となっています。
また、単に判例だけが載った本というわけではなく、法についての解説も記載されています。
そのため、法の専門家でなくとも分かりやすく読める本だと思います。
「職場と学校の判例が膨大に載った本だと、自分が知りたい判例を探し出すのが大変じゃない?」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
掲載判例一覧表のページがありますので、ここを見れば、知りたい判例の分野がどの辺りに掲載されているのか一発でわかるのです。
とても丁寧で便利な本ですので、こちらもぜひ購入を検討いただければと思います。
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判例で理解する職場・学校のセクハラ・パワハラ 単行本 – 2016/11/25
おすすめ商品③
3点目にご紹介する商品は、「平成29年版 年間労働判例命令要旨集」です。
この商品に関しては、労働関連の判決・命令が豊富に載った本となっています。
パワハラという部分に限定した本ではありませんので、労働関連の裁判の実態について広く把握できるということですね。
「たくさんの判例を見れるのはいいけど、判例の中に専門的な用語があったら理解できないじゃん!」と思う人もいるかもしれませんね。
しかし、この商品の場合、判例関連用語集が付いていますので、それを見れば専門的な用語も理解できるというわけです。
したがって、こちらの本についてもおすすめできますよ!
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おすすめ商品④
4点目にご紹介する商品は、「判例から読み解く 職場のハラスメント 実務対応Q&A」です。
この商品に関しては、パワハラ・セクハラ・マタハラ関連の判例が載った本となっています。
判例を踏まえた上での検討、留意点、課題なども載っていますので、非常に参考になる本ではないでしょうか。
また、Q&A形式での記載もありますので、疑問の解消などもできるでしょう。
この本について特徴的と言えるのは、企業対応の視点で掲載されているということです。
パワハラで裁判を起こすことを考えるのであれば、企業視点での判例本も参考資料として使えるでしょう。
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判例から読み解く 職場のハラスメント 実務対応Q&A 単行本 – 2016/6/2
職場でのパワハラ上司&同僚に耐えながら転職活動するメリット2つ
パワハラを受け続け、色々な手段を検討した結果、「転職」を決める人も多いです。
ここで問題になるのが、働きながら転職活動をするか、今の会社を辞めてから転職活動をするかということですよね。
そこで、この章では働きながら転職活動をするメリットをご紹介しましょう。
収入を得続けられる
退職後に転職活動をすると、収入面が不安定な中で次の働き口を求めていかなくてはなりません。
貯蓄が減り続ける中で転職先も決まらないという状況が続くのは、精神的な焦りにつながりますね。
それに対し、働きながら転職活動をすれば、その期間も収入を得続けることができます。
経済的な安心がある中で採用試験を受けられるというのはメリットですね。
経歴上空白期間ができない
会社を辞めてから転職活動をするとなると、多少は経歴上の空白期間ができることになります。
いわゆるブランク期間ですよね。
このブランク期間については、あまりよく思われないケースが多いです。
しかし、会社勤めをしながら転職活動をし、転職先が決まってから会社を辞めて入社するという形であれば、基本的にブランク期間ができないということになります。
これもメリットですね!
まとめ
・パワハラを受けた場合、証拠さえきちんと集めれば裁判を起こして勝つこともできる。
・パワハラを受けた場合、転職も一つの手段だが、即辞めるのではなく、会社に在籍しながら転職活動をする方がメリットは多い。
今回は、パワハラの定義や事例、解決のケースや訴える際のポイントなどについて具体的にご説明してきました。
優位性がある人から嫌なことをされると、仕返しも難しいと感じてしまって精神的に大変ですよね。
確かに、優位性がある人とのいざこざを解決するのは簡単ではありませんが、対処法はいくつかあります。
穏やかな解決法が難しい場合、裁判ということも一つの選択肢になってくるでしょう。
証拠がしっかりとあり、弁護士のサポートを受けることができれば、勝訴の可能性は十分にあります。
ただ、裁判というのはすぐに終わるものではありませんし、長期的な戦いになることも想定しておく必要があります。
そういったことも含めて、パワハラ対策を考えていかなくてはならないのです。