楽しいはずの飲み会で起こる「アルハラ」はお酒が好きな人も飲めない人も事例や対策を事前に知っておくことが大切です。
今回はアルハラの定義、会社や大学での事例、加害者・被害者の特徴、訴えることが可能か、対策を紹介します。
目次
アルハラの定義とは?
ハラスメントの一つに「アルハラ」というものがあります。
これは正式名称は「アルコールハラスメント」です。
つまりお酒に関するハラスメントのことを「アルハラ」というのです。
アルハラの定義は以下の通りです。
「飲酒に伴う嫌がらせや人権侵害、相手を不快にする行為」
自分よりも立場の弱い人に飲み会などに連れて行って無理やり飲ませたり、命に係わる一気飲みを無理に行わせたりする行為は、このアルハラに当てはまるといえるでしょう。
上司と部下、先輩と後輩などの関係を利用してアルハラが行われているようです。
このアルハラは刑事罰や損害賠償請求などにつながる深刻な問題です。
アルハラといわれる5つの具体的な行為をご紹介しましょう。
①飲酒の強要
②一気飲みをさせる
③意図的に酔わせる
④飲めない人への配慮に欠ける行為
⑤酔ったうえでの迷惑行為
お酒を飲む人も飲めない人も、アルハラについて正しく理解しておくことで、アルハラの加害者または被害者になることを避けられるのではないでしょうか。
アルハラの事例6つ 【大学や会社での上下関係で起こりやすい】
アルハラの事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
アルハラは、自分の立場を利用して弱い立場にいる人に飲酒を強要するというケースがよく見られます。
アルハラが起こりやすいのは上司と部下という関係のある会社、または先輩と後輩の意識が高い大学などです。
これまで実際に起きていて、ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)に掲載されているアルハラの事例についてご紹介していきたいと思います。
①サークルの合宿
まず、一つ目の事例はサークルの合宿の際のケースです。
大学のサークルでの合宿に行っていたときに、疲労困憊している状況で飲酒を強要されたようです。
先輩たちにはやし立てられながら、挨拶をさせられ一気飲みを強要されます。
先輩という立場を悪用して「先輩の次ぐ酒はすべて飲まなければならない」と言われ、飲めばご褒美でさらに飲まされ、飲めなければ罰として飲まされたようです。
嘔吐などをしていてもさらなる飲酒を強要されており、これは代々続く先輩たちによるアルハラでした。
この事例は傷害罪や過失傷害にあてはまります。
②大学のゼミ
大学のゼミで飲み会が開かれ、すべての人が参加するよう強要された事例もありました。
体質的に飲めない人は指導を受ける権利放棄の脅迫をされ、実際に飲めなかった人には指導してくれなかったようです。
無理やりお酒を飲ませようとする行為、またお酒を飲まなかったからと言って教育を放棄させるこの事例は強要罪やパワーハラスメントとして訴えることができます。
③コンパ
3つめの事例は、コンパでの出来事です。
新人歓迎のコンパが行われたときに先輩から飲むように何度も強要されたようです。
そして救急車で運ばれた人たちも何人もいました。
そのことを大学の先生や心理カウンセラーに報告したものの解決されなかったようです。
無理矢理飲酒を勧めて強要し、急性アルコール中毒になり搬送されたというこの事例は過失傷害に当てはまります。
④上司からイッキの強要
会社の上司と飲みに誘われ、イッキを強要されるという事例もあります。
イッキは命に関わるものです。
この事例によると、この男性は記憶をなくし、帰る電車に乗り遅れ、メガネが壊れ、気がついたら部下の家にいたようで、ケガもしていたという結果になっています。
また、カラオケに誘われたときは、点数が低い部下にサビの部分を歌うときにイッキさせていたようです。
再三の誘いで帰れなくなるストレスゆえに休職に追い込まれる人もいるようです。
また飲み会での飲めない体質なのに飲酒を強要されることによって急性アルコール中毒になった人もいます。
⑤同期との飲み会
同期との飲み会においてもアルハラが起こることがあります。
飲めない人がいるのに「これ全部飲むまで帰さない」といわれアルコール中毒になり病院に運ばれたという事例があります。
飲酒を強要したこと、急性アルコール中毒により死亡したという事例は過失傷害、傷害致死といった罪に問われることがあります。
⑥会社の飲み会
会社の飲み会は特にアルハラが起こりやすい状況です。
飲み会で無理矢理お酒を大量に飲まされます。
そして吐いたりすると支離滅裂な説教をされ、さらに飲まされることもあるようです。
飲み会に参加しなければ怒られる、退職届を勝手に出されてしまうという大変な被害も受けている人がいるようです。
無理矢理お酒を飲ませることは強要罪であり、酔いつぶさせる目的でお酒を飲ませると傷害罪に当たります。
アルハラ加害者になりやすい人の特徴5つ
中にはアルハラだと気づかずにお酒を勧めてくる人もいるでしょう。
もしかするとあなた自身がアルハラの加害者になってしまうことがあるかもしれません。
そんなことがないように、アルハラの加害者になりやすい人の特徴を取り上げたいと思います。
①係長、課長クラス
まず、一つ目は係長、課長クラスの人たちです。
この人たちはバブル世代です。
昔からのしきたりをかなり重要視するため、若者を軽視し、からんでくる人も多いようです。
自分が若い頃も無理やり飲まされていた、という理由から飲酒を強要してくるケースは珍しくありません。
また上司という権威を振るって「俺の酒が飲めないというのか?」と脅迫さえしてくるかもしれません。
仕事の疲れがあるうえに、飲み会には強制参加、上司の愚痴を聞かされ、二日酔いで出勤となるケースです。
②体育会系のノリの軽い人
2つめは体育会系のノリの軽い人です。
運動部に所属していた人なら飲み会を盛り上げる役割なども担ってきたことでしょう。
お酒に強く、ノリがよく、飲み会を思いっきり楽しめる人は、一気飲みを助長したり、飲酒を強要する傾向があります。
後輩を指名してイッキさせたり、あいつが飲むからお前も飲め、という意味が分からない理由で飲酒を強要します。
ノリがいいだけなので、悪気はないのかもしれませんが、急性アルコール中毒者を出してしまうようなタイプです。
③お酒を飲むと性格が変わる人
お酒を飲むと性格が変わってしまう人も要注意です。
普段は優しくて穏やかな上司、または先輩かもしれませんが、お酒を飲むと饒舌になったり、怒りっぽくなる人がいます。
そのような人はアルハラの加害者になりやすいといえます。
こちらの事情には全く聞く耳を持たず、酔っ払っているため思考が遮断されてしまっています。
飲めない理由を説明してもわかってくれないでしょう。
前もって酒癖の悪い人の情報はつかんだうえで飲み会に参加しましょう。
④弱い立場の人に集団で強要する人
弱い立場の人に集団で飲ませようとする人はアルハラの加害者となります。
新入生や新入社員など、場の雰囲気に慣れていない状況での飲み会で飲酒を強いられると従うしかありません。
上司や先輩が集団でお酒を勧めると飲まざるを得なくなるのではないでしょうか。
この場を盛り上げなければという使命感からか、強要されるがまま飲んでしまい、急性アルコール中毒になってしまうことも考えられます。
集団での強要は非常に危険です。
⑤飲めない人が苦しむのを楽しむ人
根本的に意地悪な人、イジメを行っている人は危険人物です。
飲めない人が飲んで苦しんだり、眠ってしまったり、変な行動をするのを見て楽しむのです。
このケースは本当にタチが悪いので、何を言っても無駄でしょう。
社会人には少ないかもしれませんがまれに見られるタイプの人です。
相手をお酒でつぶそうとする人ですから、そもそも飲み会に参加しないほうがいいかもしれませんね。
アルハラ被害者になりやすい人の特徴5つ
では、反対にある原の被害者となってしまいやすい人とはどんな人なのでしょうか?
アルハラ被害者の特徴をいくつかご紹介しましょう。
①上司のパワーに負かされやすい人
上司のパワーに任されてしまう人は要注意です。
上司に煽られるがままお酒を飲むことになってしまいます。
上司だから何も言えない…となってしまわないようにしましょう。
②明るくて目立ちがちの人
明るくて目立ちたがりの新人は、飲み会のターゲットにされがちです。
上司や先輩に目をつけられて、酔いつぶす目的でお酒をたくさん飲まされるでしょう。
目立ちすぎてノリがいいと思われると、毎回飲みに誘われるようになり、断り切れなくなります。
③聞き上手
聞き上手な人はお酒の席で、延々と愚痴を聞かされてしまう危険があります。
また、酔ってくると話を聞いてくれる人にも飲ませようとします。
根が優しい人は特に注意しましょう。
いくら上司や先輩でも深入りは危険です。
④いやな顔ができない人
いやな顔ができない人もアルハラの被害者となってしまいます。
上司や先輩に嫌な顔なんてできない、と思うかもしれませんが嫌がっていることを伝えなければいけないときもあります。
いつも笑顔で断らない性格の人はアルハラやセクハラのターゲットにされてしまいます。
⑤お酒を選ぶ主導権を渡してしまう人
お酒を選ぶ主導権を他の人に渡してしまう人は、アルハラに遭ってしまいやすいといえます。
自分はもう飲めない、と思っても一緒に飲んでいる人に任せると、かなり度数の高いお酒を飲まされるかもしれません。
はっきり伝えることも必要です。
アルハラで訴えることは可能?
アルハラで訴えることはできるのでしょうか?
アルハラを規制する法律ははっきり言ってありません。
しかし、「酒によって公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」というものがありますので、その法律に基づいて刑事・民事責任を追及できることもあります。
実際にアルハラで訴えて強要罪、傷害罪、過失傷害罪、傷害致死罪などに当てはまる人たちもいます。
アルハラの加害者はもちろん、それを止めなかった周囲の人たちにも責任があることを覚えておきましょう。
会社や大学でのアルハラ対策① 相談できる人たち7選
アルハラを受けているなら、まずは信頼できる人に相談することお勧めします。
以下に紹介する人たちはきっとあなたの立場に立って、できる解決方法を一緒に考えてくれることでしょう。
①社長や部長
②話しやすい上司
③人事課、もしくはハラスメント対策室
④学生課
⑤アルコール問題全国市民協会
⑥行政機関
⑦弁護士
会社や大学でのアルハラ対策⓶ 具体的な方法6つ
アルハラの被害者とならないためにできることを6つ考えましょう。
①飲めない理由を説明する
まずは、飲めない理由をはっきり説明してください。
アルハラだとわかっていない人なら説明するとわかってくれる人もいるかもしれません。
ノンアルコールやカクテルを頼んで上手に飲み会を乗り切ることができるかもしれません。
②アルコールを飲んだ時の話をする
2つめはアルコールを飲んだときにどんな状況に陥ったのかを伝えましょう。
過呼吸で倒れた、嘔吐した、救急車で運ばれた、蕁麻疹が出る…などの大変だったエピソードをまじめに伝えことでわかってくれるかもしれません。
③パッチテストをする
みんなの目の前でアルコールのパッチテストを行うのもよい方法です。
話題作りとして周りの人たちもみんな巻き込んでテストを行いましょう。
雰囲気が悪くならずに済みますし、お酒が飲めないことをはっきり伝えることができるでしょう。
④アプリをダウンロード
直接断りづらいときには、アルハラ対策用のアプリをダウンロードしておくといいかもしれません。
4種類の動物が代わりにアルコール摂取を断ってくれます。
同僚や先輩に協力してもらえるとよりよいですね。
⑤訴えます!とはっきり言う
あまりにもしつこい上司や先輩には「アルハラで訴えます!」とはっきり言う必要があるかもしれません。
上司だからと遠慮は必要ありません。
本気で嫌がっていることを伝える必要があります。
そのまま怒って帰ってもいいでしょう。
⑥酔う前に伝える
上司や先輩が酔っ払ってしまう前に、飲めないこととその理由を伝えておきましょう。
シラフの時に伝えておけば、酔っ払っても頭の隅で覚えているので思い出してくれるでしょう。
それでも勧めてくるときには、まじめな顔で冷静に「飲めない、とお伝えしましたよね」と言えばいいのです。
まとめ
・アルハラで訴えられて強要罪、傷害罪、過失傷害罪、傷害致死罪などに当てはまる人たちもいる。
・アルハラに対しては毅然とした態度で接することが重要。
お酒は本来楽しく飲むものです。
苦しむためのものではありません。
上司だから、先輩だからといってもやっていいことと悪いことがあります。
その場の雰囲気や階級意識に流されずアルハラを撃退しましょう。