パワハラは上司が部下にするイメージですが最近では部下から上司へのパワハラも深刻な社会問題となっています。
今回は部下から上司へのパワハラについて、定義や原因、職場の特徴、事例4つ、やり方3つ、対処法6つを紹介します。
目次
部下から上司へのパワハラとは?
パワハラという言葉はよく耳にしますね。
上司が部下に対して権威や権力を乱用して嫌がらせを行う行為です。
この行為によって多くの退職者、転職者、精神病患者や自殺者が出ているため、深刻な問題となっています。
しかし、最近では「逆パワハラ」、つまり部下から上司へのパワハラが多く報告されているようです。
今までとは反対のパワハラで、思わず動揺してしまうかもしれません。
悪気なく行っていることもありますし、悪質ないじめのようなものもあるようです。
部下から上司へのパワハラの定義とは?
部下から上司へのパワハラである、逆パワハラとはいったいどういったものなのでしょうか。
逆パワハラの定義について知っておきましょう。
逆パワハラとは
①部下の専門知識の優位性や人間関係を利用し
②業務の適正な範囲を超えて
③精神的・身体的苦痛を与える
④職場環境を悪化させる
以上のような行為のことです。
これまで言われてきた「パワハラ」は、上司としての監督権や指導権を利用したものでした。
しかし、今回は部下という立場を利用したものになっています。
普通のパワハラと違い、上司が部下からのパワハラを上層部に報告することは困難であり、逆に上司が不適格者であると判断されて解雇されてしまう恐れをぬぐえずにいるようです。
部下から上司へのパワハラが起きる原因3つ
これまでは上司によるパワハラが行われていたのに、いつの間に立場が逆転したのでしょうか?
最近ではもっぱら部下からの上司へのパワハラ、逆パワハラが急増しています。
その原因となった3つの背景について考えていきましょう。
①産業構造の変化
まず一つ目の原因は産業構造の変化です。
2000年ごろから第二次産業が停滞し始め、情報サービス業を含む第三次産業が増加していきました。
そのため、最近の職場では常に新しい知識や情報が必要とされています。
その結果、新しい情報収集、処理能力に長けている若い人たち、部下の世代である若社員たちが職場の中で優位になっているのです。
これはインターネットの普及により、インターネットを使用することに慣れている若者たちの影響といえるでしょう。
②上司を評価する制度
2つ目の原因は、上司を評価する制度が導入されたことです。
最近では上司が部下を評価するのではなく、人事部により部下が上司を評価するというものも導入され、360評価が行われています。
今までは上司を評価の対象とすることはありませんでした。
しかし部下が上司を評価する制度ができたことによって、部下も強気に出られるようになったのです。
そして、上司は部下にどのように評価されるかを気にするようになり、立場が逆転していっています。
③実力至上主義
これまで年功序列型社会だったのに対し、最近では実力至上主義が押されています。
技術が進歩し続けている会社において、新しい情報、発想、技術の進化のアイデアなどが必要とされています。
ですから、経験年数は長くても実力のない上司が、実力が高い部下にパワハラを受ける環境ができてしまっているのです。
上司であるにもかかわらず、実力を持っている部下たちから軽視され反発されているようです。
部下から上司へのパワハラが起きやすい職場の特徴3つ
あなたの会社は大丈夫ですか?
逆パワハラが起きやすい会社の特徴というものが存在します。
あなたも逆パワハラの被害者、または加害者になることがあるかもしれません。
逆パワハラの起きやすい職場の傾向や条件を紹介しましょう。
①部下の数が多い
一つ目の傾向は、部下の数が上司の数に比べて多いというものが挙げられます。
上司といっても、部長などの中間管理職、店舗の責任者など、上層部ではない上司たちが逆パワハラに遭いやすいといわれています。
上司が一人で、一緒に働いている後の人たちはみな部下、という場合には部下たちの抱えるストレスがすべて上司一人に向けられてしまうことがあります。
その結果、部下から上司へのパワハラが起きてしまうのです。
②スキルの差がない
2番目の特徴は、部下と上司の間にスキルの差がないというものです。
技術が機械化したり情報化したりすることによって、経験値を重視する職業というものがどんどん減っていっています。
職人などは別として、人間が行う作業がどんどん減っている中、上司と部下とのスキルの差がどんどん埋まってきています。
その結果、部下が上司を軽んじてしまったり、上司が部下に権威を振るうことができなくなってしまっています。
そのことを利用して、部下から上司へのパワハラが生じ、上司が部下の顔色を窺わなければいけないのが現状です。
③若い世代が多い
3つ目の特徴は、会社に若い世代の社員が多く、多くの仕事が若い世代に渡っているというものがあります。
部下の世代が偏っていると部下同士のチームワーク、連帯感が生まれ絆が強くなります。
その結果、部下同士は非常に仲がいいものの、上司と部下とのコミュニケーションがとりずらくなります。
そして上司が疎外感を覚える職場となっていくのです。
部下から上司へのパワハラの事例4つ
逆パワハラの事例には典型的なものが4つあります。
1つずつご紹介しましょう。
①脅迫
まずは、部下から脅迫されるというものです。
上司が指導するたびに部下から「それはパワハラです、訴えますよ」という返答が返ってくるのです。
上司が指示・指導すること、仕事のあらゆる不満をパワハラにしようとします。
例えば
・定時に帰れないこと
・飲み会に誘うこと
・休日出勤
・急ぎの連絡
これらすべてをパワハラとして、人事課に申告する、上層部に相談する、などと言って上司を脅します。
仕事柄どうしようもない指示や指導があると思いますので、何でもかんでもパワハラとするのは嫌がらせを超えて脅迫です。
②無視
2つめは、部下が上司を無視することです。
部下たちから無視された上司だけが大切な情報を知らなかった、イベントに招かれなかった、などということはよくあるようです。
また、この無視が酷くなると、上司としての面目を思いっきりつぶされることになります。
例えば
・他の上司を優先させて仕事を行く
・指示した内容を故意に無視し、仕事の失敗を上司のせいにする
・皆が必要なもので上司の分だけ用意されていない
・連絡が繋がれず契約を逃した
などがあります。
仕事に支障が出る大きな問題です。
③名誉棄損
3つめは名誉棄損です。
上司としての名誉を微塵も考慮されていない言動を部下から受けるかもしれません。
例えば
「上司のくせにこんなこともわからないんですか」
「なにもできないんですね」
「こんな簡単なこともできないなんて上司失格ですね」
といった誹謗中傷があります。
その他にも以下のような行動をとられてしまうこともあります。
・身体的特徴を中傷
・中傷ビラを社内に巻く
・事実ではない噂を上層部に告げ口
・社内中の信用を損なうような行動
これらは立派な名誉棄損罪に当たる行動です。
④暴力
刑事事件につながりかねない部下から上司へのパワハラも起きています。
暴力とは言えないような、かわいい悪ふざけのようなものもあります。
コーヒーを淹れてもらったらただのお湯だった、というイジメはまだ軽く思えるかもしれません。
上司と部下の関係としてはあり得ませんが…。
その他にもどんどんエスカレートしていくと、車のミラーを曲げられる、ガラスを割られる、殴られる、蹴られる、など身体的暴力にも発展していく逆パワハラが生じています。
部下から上司へのパワハラの主なやり方3つ
パワハラとは権威を持っている人が、弱い地位の人に行う行為だ、と考えてきた人にとって、今回の情報は驚かざるを得ないものだったでしょう。
近年は逆パワハラが横行していることは、厚生労働省の調査により明らかになっています。
逆パワハラを起こす部下はどのようなことを行うのでしょうか?
3つの主な事例をピックアップしてみました。
①言うことを聞かない
まず、一つ目は言うことを聞かないというものです。
部下が上司の言うことを聞かない、ということで頭を悩ませている人は少なくありません。
一見普通のことに思えても、実は逆パワハラの兆候かもしれません。
新しい仕事や提案を持ちかけたときに部下から「できません」「今までの方法で問題ありません」「私の仕事ではありません」などと断られてしまいます。
部下同士で裏で結託しており、どの部下に仕事を振ろうとしても断られるという悪質なものも存在しています。
②中傷を広める
2つめは上司の中傷を広める、というものです。
実際にはそうではないことを上司が行ったとして、中傷ビラを会社の上層部に送付したという逆パワハラの実例があります。
その逆パワハラを受けた上司は自ら命を落としました。
「金銭着服している」「セクハラしている」など根も葉もない噂を事実に見立てて、中傷することは立派な犯罪です。
しかし、きちんとした調査が行われないまま上司が悪いということになり、被害者である上司が加害者扱いされてしまうのです。
③侮辱する
自分よりも知識がない、スキルを持っていない上司を侮辱する部下もいます。
逆パワハラの事例として最も多いものがこのケースです。
最近では部下のほうが仕事ができる、ということも珍しいことではないため、こうしたことが起こりやすい環境になっています。
「こんなことも知らないんですか」などと言って、自分のほうが上司よりもスキルがあるからと言って、上司に劣等感を抱かせる方法です。
そうした負い目から部下に強気で接することができず、逆パワハラの被害者となってしまうのです。
部下から上司へのパワハラの対処法6つ
会社という組織の中ではたくさんの人間がいます。
もちろん、すべての人と良い人間関係を保っていくのは難しいことでしょう。
一緒に仕事がやりやすい部下もいれば、扱いづらい部下もいるはずです。
しかしハラスメントはどんな状況でもあってはならないものです。
部下から上司へのパワハラが起きている場合、どのように対処したらよいのでしょうか。
上司が知っておくべき逆パワハラの対処法を6つご紹介します。
①おどおどしない
まずは、おどおどとした態度をやめましょう。
今の職場環境が悪いので部下からパワハラを受けているのだ、と思っているかもしれませんが、どこに行っても同じです。
おどおどした態度だと、この上司ならバカにしやすい、と部下に思わせてしまいます。
初めは小バカにする態度から始まり、徐々に無視され、部下と上司のスキルの差から侮辱されていき、身体的な暴力など深刻な問題へと結びつく可能性があります。
部下から何か意見されるときも、あくまで上司としての威厳を保ちつつ、しっかりとしていましょう。
②ユーモアで返す
嫌味くらいのものであれば、ユーモアで返答すると逆パワハラの悪化を食い止めることができるかもしれません。
周りが見えておらず余裕がないと、人間関係は悪化していきます。
部下から度の超えた扱いを受けたとしても、上司に余裕があり笑いながら返せば、いつかは嫌がらせもなくなるはずです。
きっと助けてくれる部下も出てくることでしょう。
部下からの逆パワハラすべてに感情的に対応していると、どんどんエスカレートしていくので注意しましょう。
③気にしない
気にしないことに越したことはありません。
もちろん気にせずに仕事を行えたらそれが一番良いのですが、難しいですよね。
部下から逆パワハラを受けているのに、平然とすることができているとすればそれはかなりの大物です。
しかし、部下からの逆パワハラに関して、いちいち構えて反応していては身も心も持たないのではないでしょうか。
文句を言ってくる、無視をされる程度の逆パワハラであれば、まずは気にしないように努力しましょう。
④会社へ相談・報告
深刻な逆パワハラの被害が生じているのであれば、会社に相談し報告しましょう。
パワハラは一つの犯罪で、もちろん逆パワハラも立派なルール違反です。
人権侵害や労働基準法違反となるため、上層部に相談する必要があります。
会社の労働問題として取り上げてもらいましょう。
⑤労働基準監督署に相談
労働基準監督署に相談するのも一つの対処法といえるでしょう。
会社の上層部に相談しても全く受け入れてもらえないという場合はここに助けを求めましょう。
労働基準監督署は労働基準法に違反していないか会社自体を監督し、適切な判断をしてくれます。
⑥記録を残す
逆パワハラを受けているという証拠を記録しておきましょう。
防犯カメラやボイスレコーダーなどで、逆パワハラの証拠をつかんでおくとよいでしょう。
メモしかないのであれば、いつ、どこで、誰がどのような逆パワハラをしたのかを記録しておきましょう。
まとめ
・部下から上司へのパワハラが起きやすい職場の特徴は「部下の数が多い」「スキルの差がない」「若い世代が多い」の3つ。
・部下から上司へのパワハラの対処法としては最終的には労働基準監督署に相談することになるので、パワハラの証拠を取っておくのが良い。
今の時代、誰がハラスメントの被害者になるかはわかりません。
小さな嫌がらせから始まるものも、最終的には深刻な被害を引き起こしかねません。
部下から上司へのパワハラに注意して、できる限り良い職場環境を維持できるよう努力していきましょう。
被害者になったときには無理をせず相談しましょう。