社会問題である職場でのセクハラですが泣き寝入りするのではなく具体例を知り対策をとることが重要で、場合によっては訴えることも必要です。
今回は、職場でのセクハラの定義や具体例4つ、対策法3つ、訴えるポイントを紹介します。
職場でのセクハラの定義
企業とは、同じような目標を掲げた人たちの集まりと言えます。企業の経営方針に賛同する人が集まっているわけですので、当然ですね。
しかし、同じ企業であっても、そこで勤めている人の人格や価値観というのはそれぞれ違います。
そのため、「この人なんでこんなヒドイことするんだろう」と思ってしまうこともありますよね。また、「これってセクハラじゃ…」と思う人もいるでしょう。
そこで、この章ではセクハラの定義について具体的にご説明しましょう。
性的な要素を含む嫌がらせ行為のこと
セクハラの場合、「性的な要素」というのが1つのポイントになります。
例えば、相手が嫌がっているのにもかからわず、性的な要求をするという行為は、セクハラになるのです。
また、立場が上の人が性的な要求をし、拒否した場合には評価を下げるというケースがあります。これは、れっきとしたセクハラになります。
本来評価を下げるというのは、該当社員の無断欠勤であったり、仕事上でミスをしたときにできる行為です。
「性的な要求を受け入れないなら評価を下げてやる!」というのは、とても悪質なセクハラ行為と言えます。断じて許せませんね。
本人がどう感じるのかがポイント
セクハラの場合、被害者側が「どう感じるのか」というのがポイントになります。
例えば、上司が部下に性的な行為をしたとします。この時、その部下が「これは嫌がらせだ!」と感じればセクハラ認定ですが、そう感じなかった場合、セクハラにならないのです。
そのため、同じ性的行為でも、セクハラ認定されるかどうかはケースバイケースということですね。
ただし、仮に性的行為をされた側が本人嫌がっていなくても、その周りにいる社員が不快に感じれば、セクハラ認定されるケースもあります。この点も押さえておきましょう。
逆セクハラも存在する?
セクハラというと、「男性が女性に対してするもの」というイメージを抱いている人も多いでしょう。
しかし、必ずしもそうとは限りません。女性が男性に対してセクハラをするケースもあります。
確かに、体格や力で言えば男性が上回っていますが、立場が上の女性から性的要求や性的行為をされると、拒むのが難しいということではないでしょうか。
ただ、全体として見れば、男性が女性に対してセクハラをする率の方が高いのは確かなようです。
職場でのセクハラの具体例4つ
セクハラと言っても、その事例は本当に様々です。
そのため、「嫌なことをされているけど、セクハラには当たらないだろうから我慢するしかない…」と思っていも、実際はその行為がセクハラに該当する可能性はあります。
そのため、多くの具体例について知っておくことは大事です。そこで、この章ではその具体例について見ていきましょう。
具体例①身体を触る行為
職場にはいろいろな人がいますので、中にはボディタッチをするケースもあります。
ただ、業務上においてボディタッチが必要ということは滅多にありませんで、ボディタッチがあれば即セクハラというケースが大半でしょう。
また、「肩に手を置いたり、頭をなでたりするくらいならOKでしょ?」という人もいるかもしれませんが、そうではありません。
どのようなボディタッチであろうとも、相手が嫌がればセクハラということになるのです。
具体例②性的な意味合いを含む発言
AさんがBさんに対し、性的な意味合いを含む話題を振るというケースがありますが、相手が嫌がっていれば、これについてもセクハラ行為に該当します。
あからさまな猥せつ発言でなくとも、性生活の話題などでもセクハラになるケースがありますので、この点はしっかりと押さえておきましょう。
具体例③性的な意味合いを含む噂を流す
AさんがBさんの性的な事情を含む噂を流すという行為も、セクハラに該当する可能性が高いです。
確かに、このケースではBさんに直接的にセクハラ発言をしているわけではありませんが、噂を流せば多くの人が不快に感じますので、セクハラに該当する余地は十分にあるのです。
また、それだけでなく、名誉棄損にも該当する可能性がありますので、とても悪質な行為と言えます。
具体例④しつこく食事に誘う
嫌がる相手に対し、しつこく食事に誘うという行為についても、セクハラに該当します。
食事に誘うという行為自体は、ボディタッチやわいせつ発言とは違いますし、食事に誘うことでカップル成立につながるケースもあるでしょう。
しかし、相手が拒絶しているのにもかかわらず、3回も4回も食事に誘う行為は、迷惑行為に等しいです。したがって、セクハラに該当することは明白です。
職場でのセクハラ対策3つ
セクハラを受けたらどうしたらいいのかという点は、一見悩ましい問題です。会社勤めをするということであれば、立場が上の人に強く出るのが難しいですよね。
しかし、セクハラは絶対にしてはいけない行為の一つですので、しっかりと対策をしていかなくてはなりません。
そこで、この章では3つの対策法をご紹介しましょう。
嫌だという気持ちを伝える
セクハラする側としても、自分のやっている行為がセクハラだと気づいていない可能性があります。
そのため、曖昧な言い方をしてやり過ごしているのなら、この際「嫌です!」という意思をしっかりと伝えてみましょう。
それにより、セクハラ行為をしてこなくなるかもしれません。
確かに、相手の方が立場が上であれば、強気な態度に出るのは気が引けるでしょう。
しかし、言い方にもいろいろありますので、「やめていただけませんか?」という丁寧な感じで伝える程度なら、それほど難しくないのではないでしょうか。
被害報告を受け付ける部署に連絡する
企業の場合、セクハラの対策や防止を適切に行う義務があります。そのため、基本的にはセクハラ被害の報告を受け付ける部署が存在します。
同じ職場内の人からセクハラの被害を受けたということであれば、その部署に相談することにより、セクハラ問題が解決される可能性があるのです。
ただ、相談したからと言って即セクハラ認定ということにはなりません。社内で調査した上で、セクハラの事実認定について判断することになります。
そのため、被害者としては、セクハラの証拠や被害を証言してくれる証人の確保をしておくことが望ましいです。
社外の相談窓口に連絡する
職場でのセクハラ被害を相談できるところが、社内だけとは限りません。社外にも、そういった相談を受け付けるところがあります。
具体的には、厚労省の総合労働相談コーナーが挙げられます。ここに相談することにより、アドバイスを受けることができますので、一度相談してみるのもいいでしょう。
詳細については下記リンクからご確認ください。
職場外の人からのセクハラを訴えることは可能?
セクハラ行為をしてくる相手が、社内の人間とは限りません。取引先の人間からセクハラ行為をしてくるというケースも多々あります。
その場合、被害を受けた当人としては、「社外の人に対しては責任を問えないのでは?」という疑問が生じるかもしれませんね。
取引先が個人である場合にはなおさらでしょう。そこで、その点についてご説明します。
慰謝料請求できる
取引先が個人であり、セクハラ行為が明白であれば、民事訴訟において慰謝料請求することができます。なぜなら、セクハラという行為が民法上の「違法行為」に該当するからです。
ただ、民事上の不法行為には要件がいくつかあり、その全てを満たしていないと、損害賠償責任を負わせることは難しいですので、その点は踏まえておきましょう。
悪質な場合には刑事告発も視野に入れるべき
そのセクハラ行為が極めて悪質ということであれば、強制わいせつ罪などが適用される可能性もありますので、刑事告発も視野に入れるべきでしょう。
また、強制わいせつ罪が適用されるほどの悪質な行為でなかったとしても、刑事上の責任を問える可能性があります。軽犯罪法や、市の条例が適用になるケースがあるからです。
そのため、「この人は刑事上の責任を取るべきだ!」と判断したのであれば、前述の点も含めてよく検討してみましょう。
セクハラを訴える場合のポイント4つ 【民事訴訟】
セクハラ行為を執拗に受けた場合は、精神的なダメージとても大きいはずです。それだけ苦痛を受けたのなら、慰謝料を求めたいという気持ちがわいてくるのも自然です。
実際に、セクハラを訴えて慰謝料をもらえたケースは多くありますので、法廷で争うことも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
そこで、この章では民事訴訟を起こすにあたってのポイントをご説明しましょう。
セクハラ行為に当たるかどうか慎重に見極める
自分が受けている行為が、明確にセクハラに該当するかどうかを見極めることが大事です。
例えば、「食事に行こうと誘われた」ことを理由に裁判を起こしても、慰謝料を得られる可能性は低いです。なぜなら、一度食事に誘う行為だけでは、セクハラ認定すら難しいからです。
そのため、自分が受けた行為を振り返り、セクハラかどうかを慎重に見極める必要があるでしょう。
証拠を押さえる
法廷で争うことになった場合は、証拠を提出することになります。その証拠が調査され、確かなものだと判断されれば、勝訴の可能性も高くなるのです。
もし有力な証拠が全くなければ、例えセクハラ行為を受けていた事実があったとしても、勝訴の可能性は低いです。
したがって、セクハラの証拠を押さえるということがとても重要になります。
セクハラ的な発言があったのであれば、その発言を録音することで証拠になりますし、セクハラ的なメールを送られたのであれば、そのメールが証拠になります。
有力な証拠1つでも勝訴になる可能性はありますが、複数の証拠を取れるならそれに越したことはないでしょう。
なるべく早めに行動を起こす
セクハラ行為を受けたのであれば、なるべく早い段階で行動を起こした方が無難です。なぜなら、何年も前に受けたセクハラを立証することは難しいからです。
時間が経つごとに記憶も曖昧になっていきますので、「5年前にセクハラを受けたから慰謝料請求だ!」というのは無理があるのです。
ちなみに、民事上の不法行為の時効は3年です。
「じゃぁ3年を過ぎたら慰謝料請求できないの?」という疑問が出てきますね。実は、そうとは限りません。
セクハラをした人個人ではなく、会社を相手にするということであれば、「安全配慮義務違反」という名目で慰謝料請求の裁判を起こすことができます。
それでも、被害を受けてから5、6年経った後に勝訴を勝ち取るというのは難しいですが、参考程度に覚えておくといいでしょう。
実績のある弁護士に相談する
民事訴訟の裁判を起こすなら、弁護士のサポートが必要不可欠です。弁護士なしでも裁判自体は起こせますが、法律の知識なしに行動して勝訴を勝ち取れるほど、裁判は甘くありません。
そのため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
この時に重要なのは、実績のある弁護士を選ぶということです。セクハラ等の労働問題に関して経験豊富な弁護士であれば、勝訴の可能性も高まると見ていいでしょう。
まとめ
・職場でのセクハラ対策は嫌なことをはっきり伝えた上で、収まらなければ社内や社外の相談窓口に相談するのがおすすめ。
・セクハラを訴える場合のポイントは証拠を集めて、できるだけ早く実績のある弁護士に依頼すること。
今回は、セクハラの定義や具体例、そして対策法などを含めて具体的にご説明してきました。
内気な女性の場合、上司からのセクハラ行為に対して、口をつぐんで我慢してしまうということもあるでしょう。
しかし、毎日セクハラ行為をされながら仕事をするというのは、決してプラスにはなりません。精神的なダメージで仕事上のパフォーマンスが低下してしまうことは明白です。
そのため、今の状況を打開すべく、速やかに対策を講じる必要があるでしょう。
また、慰謝料を請求したいということであれば、法的な手段を取る必要があります。
そこまでするのは少し荷が重いという人もいるかもしれませんが、弁護士からのサポートを受けることで、割と簡単に法廷というステージに立つことができます。
れっきとした確たる証拠があれば勝訴の可能性はありますので、そういった手段も検討しておきましょう。